技術資料(海外)


変調された電磁波エネルギーに対する人間聴覚システムの反応


出典:「Journal of Applied Physiology」17(4):1962.p689~692 
“Human auditory system response
to modulated electromagnetic energy”
著者:アラン・フレイ ALLAN H. FREY
    コーネル大学ジェネルラル・エレクトリック先進電子センター
翻訳:石橋輝勝


  本論文の目的とするところは、非常に低い出力密度の電磁波エネルギーを使って、普通の人だけでなく耳の聞こえない人にも、音の知覚が誘発されたという、新しい現象に生理学者の注意を向けさせることである。音の誘発効果は、発信機のスイッチが入れられるや否やアンテナから200〜300フィート(約6m〜9m)離れていても誘発され、またそれは搬送波と変調によって変化した。実験は電磁波エネルギーと音響エネルギーの両者によって誘発される音を重ね合わせるように設定された。最も近接した一致は、音響増幅器がラジオ波発信機の変調機(搬送波を変調する装置)によって動かされたときに生じた。最高出力密度は重要な要素であるが、約80デシベルの周囲音では、425メガヘルツと1,310メガヘルツの搬送波で知覚を誘発するために、1平方センチあたり最高275マイクロワットの出力密度が必要とされる。平均出力密度は少なくとも1平方センチあたり400ミューワットであることである。電磁波エネルギーを感知できるさまざまな場所が事実証拠を挙げてが議論されているが、蝸牛殻の周辺は除外されている。

  おびただしい数の研究はラジオ波エネルギーの有機組織体に及ぼす影響に関するものである(電磁波エネルギー1キロヘルツから100ギガヘルツの間)。特にこの研究では体温上昇による損傷を調べてきた。平均出力密度1平方センチあたり0.1〜1ワットを数分から数時間使った。

  対照的に、1平方センチあたり数マイクロワットという平均出力密度で誘発される他の一時的な現象を発見した。そしてこれらの効果は発信機のスイッチが入れられると自動的に起こった。適当な変調で、様々な音の知覚が、数インチから数千フィート発信機から離れた被験者(普通の人だけでなく耳の聞こえない人にも)に誘発された。いくぶん条件設定の異なる発信機では、頭を強く打たれる感覚が、めまいや吐き気のような明かな初期的現象なしに誘発された。再び発信機の条件設定を変化させると、ピンや針で刺された感覚が生じた。

  これらの現象の研究は、聴覚システムがどのような働きをしているかの情報を、またより一般的には、神経システムがどのような働きをしているかの情報を提供してくれるかもしれない。例えば、このエネルギーは、神経システムが行っている信号化機能を探求するための道具として使うことができそうである。ネイダーとネフの実験手順を使えば、電極を据え付けることによる損傷なしに、神経システムを刺激するために使うことができるであろう。

  我々のほとんどのデータはラジオ波音について得られたものであり、視覚システムが電磁波エネルギーに反応することだけは先に示されてきたから、この論文では聴覚効果のデータのみ取り上げることにする。さらなる制限としては、人間を被験者としたデータのみ報告されることである。それは現時点で有意義に議論できるのは人間を被験者としたデータだけであるからである。我々が生物学的に重要な現象を扱っていることを確かめるために行なってきた長期の研究はまた別の論文に要約される。そのなかでこの研究に使われた計測装置を紹介している。

  本論文の目的はこの新しい現象に生理学者の注意を向けさせることである。報告されたデータはおびただしい数の実験を考えさせ、それに必要な実験条件を指摘することが意図されている。

  我々は重要な現象を扱っているから、必要とする実験条件の仮説を立て調査するための知識体系を構築するために、発信機の設定条件を広範囲にしてその効果を探求することにした。このようにして与えられた値は控えめなものである。それらは発信機が理想的な実験環境に据えられていないから、詳細に熟考されるべきではない。我々は計測上の制限を受けていたとしても、ラジオ周波数場において被験者の向く方向にはあまり考慮する必要はなかった。

  今まで実験に使われた発信機のほとんどは信号上にいかなる情報も乗せられずにパルス変調されたものであった。ラジオ周波数音は例えばパルス巾とかパルスの反復の割合とかいくつかの発信機の条件設定により、ズー、カチッカチッ、シュー、あるいは叩く音であると証言された。これらの音源は頭の中とか頭のすぐ後ろと被験者によって位置付けられた。音は被験者がラジオ周波数場で振り向こうが、回転しようが、いつも頭の中、あるいは直後に聞こえた。

  非常に短い四角形のパルスと高いパルス反復を使った我々の初期の実験はパルス繰り返し周波数(1秒間に発生するパルスの数)の高調波を扱っていることを指摘するもののようである。しかしながら我々の後の実験ではそうではなく、むしろラジオ波音が図1に示すようにそれぞれのパルス上に付随して起こる変調包絡線であることを指摘するように見えた。

  ある困難がラジオ波と普通の音響が重なるよう被験者に当てられたとき生じた。彼らはラジオ波音と正弦波あるいはホワイトノイズ(電子的に生み出された持続低音)が満足のいくように重なることは不可能であると報告した。音響増幅器は可変な帯域フィルター(特定の周波数帯域を通過させる)と接続され、発信機のもつパルス化機能によってパルス化された。被験者が自らフィルターを制御することが認められたとき、彼らはまあまあ満足する一致を報告した。被験者は5キロヘルツ以下の音響周波数が排除されて高周波音域へと拡大されたとき非常に満足した。しかし絶えずより高い周波数帯域が要求された。我々の高音専用スピーカーは比較的良好な高周波反応を示していたので、人々が目のレンズを削除したとき紫外線の広い範囲を見ることができる視覚現象と同じようなことをこれで示すことができるかもしれない。別の言葉で言うと、小骨の機械的伝送システムは他の聴覚システムのように高周波に反応することができないことの証なのかもしれない。ラジオ周波数は小骨伝導システムを迂回し、一方一致するために被験者に与えられた音は迂回しないから、それらの一致における被験者の不満足をこれで説明できるかもしれない。

  複数の耳の聞こえない被験者の実験において、一時、5キロヘルツ以上の音を聞く能力とラジオ周波数音を聞く能力との間に明かな関係があるように思えた。もし被験者が骨伝導あるいは空気伝導で5キロヘルツ以上を聞くことができるならば、それで被験者はラジオ周波数音を聞くことができる。例えば、可聴周波数が図2のように現われる被験者の閾値は普通の被験者と同じ出力密度であった。しかしながら最近すくなくとも我々の発信機の一つから発せられるラジオ波音を5キロヘルツ付近の帯域で知覚しない複数の被験者を発見した。
閾値(刺激に対して反応が現われ始める点)

  表1に示すように、我々は発信機の設定条件を非常に広くとって実験してきた。最近では425メガヘルツ以下の周波数でエネルギーを放出する発信機で実験し、1秒間に3・4回以下のパルス反復という、以前とは相違するタイプの変調を使用している。

  この節で報告した実験において、通常の音レベルは70−90デシベルであった(ジェネラル・ラジオ会社製、1551−B型、音レベルメーターにて測定)。実験に使ったラジオ波エネルギーを最小化するために、被験者は計測される時はいつもフレント耳栓を着用した。フレント耳栓の通常の音減衰効果は表3に示されている。ラジオ波音はフレント耳栓なしでも、周囲音が90デシベル以上でさえ聞こえ、それによりある範囲の環境音はラジオ波音を下げることは明かである。

  表2はラジオ波音を知覚する閾値を示す。それはラジオ波音の知覚における重大な要素が平均的出力密度というより最高出力密度であることを明らかに示す。発信機Bの比較的高い質が期待され、以下で議論される。発信機Gの1平方センチあたり20マイクロワットと読める価は単なる近似値と考えられるからこの表では削除された。この実験で使われた場の強度測定装置は高音で正確に判読できる性能がなかった。発信機Hからのエネルギーは最高出力密度1平方センチあたり25ワットのときでさえ知覚されなかった。

  閾値エネルギーが図4のラジオ波エネルギーの関数を図表にすると、得られる曲線は脳へのラジオ波エネルギーの浸透曲線をほのめかすものである。図5はラジオ波エネルギーの周波数による脳への計算された浸透を示す。我々のデータは、計算された浸透曲線がより高い周波数で正確であっても、低い周波数の浸透力はこのモデルで計算されたものより大きいかもしれないことを示す。

  先に記したように、閾値は周囲音が高い環境で得られた。これは通常の音響の閾値を得るのと比較して普通でない状態である。我々の最近の実験から、もし周囲音レベルがそれほど高くないならば、これらの閾値場の強さはより低いであろうということを信じるようになった。この論文の一つの目的は実験をほのめかすことであるから、被験者がもし無響室にいるならば、ラジオ周波数音の閾値はどうであるかについて理論化するために適当であるかもしれない。そこにはいかなる変換機の音もないことが想定されます。

  ラジオ周波数音の閾値として、1平方センチあたり275マイクロワットの最高出力密度は80デシベルの周囲音で計られた。耳栓は環境音30デシベルを減じた。

  もし、1平方センチあたり1マイクロワットが0デシベルと等しくセットされたなら、それで1平方センチあたり275マイクロワットは24デシベルと等しくなる。
   故に、我々は音レベルのエネルギーを50から0に減じたとき、ラジオ周波数音を50デシベルから−26デシベルに減じることができる。我々は−26デシベルのラジオ周波数エネルギーが1平方センチあたり3ミューワットに近似することを発見した。

  このように、無響室おいては、理論上、ラジオ周波数音は空間で1平方センチあたり3ミューワットと計測された最高出力密度によって誘発されることができる。このエネルギーの10%だけが頭蓋骨を貫通するようであるから、人間聴覚システムとラジオ機器はラジオ周波数エネルギーへの敏感性において大きな違いがあるようである。
聴覚システムにおけるラジオ周波数感知

  我々の実験で排除されたと思われる一つの可能性は、圧電の板として働く鼓膜と前庭窓の圧電効果である。圧電の板として働く鼓膜はラジオ周波数エネルギーによって活動させることは可能なようである。しかしこの可能性に反対する三つの事実がある。第一は、人がラジオ周波数場で圧電気を回転すると、その場の方向性の機能としてかなりはっきりした変化が圧電気に起こる。被験者がその場で彼らの頭を回転するか頭の位置を変えたとき、ラジオ周波数音の大きさの変化はさしたるものではない。第二に、鼓膜のあいだの距離は使われた波長と比較してむしろ小さい。第三のポイントは、耳硬化症(内耳に海綿状骨が生成されて難聴をきたす症状)の被験者がラジオ周波数音を聞いたことである。

  もう一つ感知機能を有すると思われる場所は蝸牛殻である。我々は神経性難聴の人にこの可能性を追求してみた。しかし結果は耳鳴りのような要因のために結論が出ていない。我々は動物実験でこの可能性を追及している。

  探知機能を有すると思われる第三の場所は脳である。ブアーとマウロはニューロンに静電気場があることを指摘しその事実を紹介している。マローとセピエルはニューロンに磁場があることを指摘しその事実を紹介している。ベッカーは会話のなかであるが、ニューロンに電荷搬送の縦の流れがあることを指摘する研究をしてきた。このように電磁波場がニューロン場と相互関係にあると考えるのは理由のあることである。しかしながら、この可能性は結論に至っていない。それに対する最も強い反対は、検索しても見つからなかったことである。一方、我々は他の非聴効果を得てきた。また脳の側頭葉の上に位置する辺りにラジオ周波数音を感知する敏感な部分があることも発見した。もし図6に示された点画の部分に2インチ四方のハエ取り網で覆うなら、完全にラジオ周波数音を遮断することができる。

  一つの探知場所があるということを確信させるよい理由はないのだから他の可能性も考えられるべきである。反対に、耳の中に電極を据えて、被験者を電気的に刺激したジョーンズ・エト・アルの研究は一つ以上の感知場所の可能性を十分にほのめかしている。また、いくつかの感覚を正しく変調された電磁波エネルギーで引き出すことができた。これらの全てが一つの感知器官に帰結することは疑わしいことである。

  最初の部分で言及したように、この論文は普通でない分野に生理学者の注意を向けさせることであり、また解釈の基礎となる更なる研究を刺激することである。解釈は明快な絵が現われる前に追加のデータが必要とされるから、この論文からは慎重に削除されてきた。更なる探求は神経システム機能の知識の高揚を期待させるものである。
(本論文の図および表は別紙にまとめて添付しました。)

第二十一回電磁波悪用被害者の会資料
  2001年6月10日(平成13年6月10日)