技術資料(海外)


電磁スペクトルの軍事利用


出典:『Cross Currents(クロス・カレント)』p.297〜304
著者:ロバート・ベッカー(Robert O. Becker)
翻訳:石橋輝勝


近年の合衆国軍事戦略は核兵器や高性能攻撃兵器にはない。それに代わるものはC3Iとして知られる教義に基づいている。C3Iとは命令Command・統御Control・通信Communicationと諜報Intelligenceとである。C3Iを通してソビエトの軍事力に対する合衆国の戦力が相対的に査定され、合衆国に対して軍事力を展開し使用するソビエトの意思が決定される。C3Iは諜報機関にこの任務を成就するために供給するだけでなく、確認され現実となった脅威を迎え撃つために、通信、軍コントロール、それらに命ずる手段も供給するものである。とりわけ軍の教義たる意思は知るべきであり、自動的に絶えず自軍の正確な現状そして敵のそれも知るべきものである。兵器システムは単に攻撃を止め反撃するための道具なのである。

合衆国の全軍事システムは、絶えずその環境を探知し、情報を統合し、決定を下し、適当な兵器システムを使って下された決定上に活動するという意味で、まさに生きている有機体に類似してきた。地球的規模で展開されている合衆国軍有機体組織の中枢神経システムは電磁場によって送信される情報搬送電子衝撃に基づいている。その感覚器官はマイクロウェイブ走査機であり、軍事衛星であり、敵の無線送信を傍受するために作られた驚くべき装置である。神経の代替として超低周波から超マイクロウェイブまでの周波数の無線送信を使う。軍有機体の筋肉は地上兵器から核ミサイル・システムまでを含む。有機体の頭脳部分は国内から海外までの各所に存在する。この有機体はホワイトハウスからの是認という理論的制限だけでそれ自身働くことができる。C3Iはあらゆる面で無制限の電力で電磁スペクトルの全周波数を無制限に使用することによっている。

歴史的発展

この軍事教義は第二次世界大戦後徐々に進化したものであり、二つの要因によって形作られたものである。第一は朝鮮戦争で通信とセンサー(初歩的レーダー)に電磁場を使用した実際的な経験であり、第二はトランジスタ化した装置が利用可能となったこと、そしてベトナム戦争当時、魅惑的な電子センサーと通信システムが発達したことである。

ベトナム戦争はC3Iの基本概念のために供給された場であり、最初の全面的電子戦争として特徴づけられる。多くの先端技術が試された。例えば、ベトコンラインからはるか後方から行なわれた広範囲偵察には太陽電池と高周波数の無線が装備されていた。これらの装置は200マイル上空の軍事衛星を経由して偵察隊同士か互いに交信できるようにし、またホワイトハウスとの自動的交信のなかにいることを可能とした。ベトナム戦争に従ってC3I教義は電磁波エネルギーの最大限の使用に基づいた今日の地球的規模のものへと成長した。

1940年代のその発端からC3I軍事教義への唯一の制限は第二次世界大戦直後および冷戦の初期に由来する。1950年代初め、国防省はマイクロウェーブの安全被爆基準の必要性を認識していた。これが直接にニューヨークのローマ航空開発センターを基地としたC3I計画の設立へと導いた。そしてこのセンターに安全被爆基準の決定がゆだねられたのである。しかしC3I計画が始まる前でさえ軍は熱効果だけが生命有機体を害しているとの概念を熱心に採用した。計算だけに基づいて、1平方センチ当たり10ミリワットという謎の数字を安全被爆水準として空軍は採用した。結果として熱効果の概念が非熱効果を完全に除外するために政策決定を支配してきた。
1平方センチ10ミリワットの基準がマイクロウェーブ周波数制限する一方、熱効果概念は電磁スペクトルの全領域に拡大された。それが組織を温めないかぎり電磁放射は無害であると考えられた。そしてマイクロウェーブ以下の周波数での被爆には制限がなかった。

陰謀

軍有機体は10ミリワット基準で計画され、一度その値が据えられると、それは非熱生体効果に対するかたちで守られるべきものとなった。非熱効果の認識および正当性は全軍有機体の崩壊とC3Iの死を意味するものでもあった。私は自ら行なってきた電気コントロールシステムおよび電磁場の生体効果に関する研究のために1970年代初期にこの議論にかかわることになった。そして急速に非熱生体効果の証言が国家安全保障上の脅威と見られていることが明らかになった。安全は考慮に入らなかった。なぜなら現実の敵意は欠乏していたとしても当時の軍の考え方はソビエトとの戦争状態にあるというものであったからである。その戦いを展開するためにC3Iの四面全てに電磁エネルギーの事実上無制限の使用を要求するのだと信じられていた。

この見解は軍であろうが民間であろうが、いかなる電磁波の使用からもいかなる非熱効果も否定する政策へと導いた。この政策目的を成就するために次に示すいくつかの行動がとられた。

科学的支配層上のコントロールが、認められた研究(熱効果の基準に挑戦しないような研究)だけが行なわれるであろうことを保障するような方法で研究費を割り当てることによって維持された。さらに科学における自然な反動傾向は有名な技術者や生物学専門家の支持を得ることによって資本に組み入れられた。例として、科学者は非生体効果が発生すると語る一方、国家安全保障上の目的がそれを一般が知る前に例外的に成就されているべきであると語った。多くの科学者の目的は軍からの無制限の援助資金と科学的文献への参照の容易さに打倒されてしまったのである。
合衆国の公式の科学的支配層が総動員された。熱効果への真剣な挑戦が公式に挙げられたとき、著名な科学団体、組織、協会には電磁場の生体効果知識の状態を評価する有利な契約が供給された。この調査は大部の報告書となっている。

これらの報告書の全てはある特徴を共有している。非熱生体効果を指摘する科学データは無視されるか、広範にわたる破壊的見解とみなされた。そのような実験は生体効果がないとする報告よりも高い正当性の水準をもつことを要求された。非熱生体効果の存在を報告する科学者はあざけり笑われ本流からはずれていると言われた。偽りの印象を作り出すために、全く故意による偽情報が用いられた。例えば、人間に対する変調された磁場のいかなる効果の証明も存在しないという発言は字義的には正しいものであったろう。それは多くの動物実験上になされた生体効果の研究報告を無視するものであり、人間に対する実験は行なわれてはいないということを無視するものであつたのである。大部の報告書に行政上の要約を含むのは一般的に行なわれていたことであった。これらの要約は全報告書のなかで隠れていたデータを決して反映することはなかったのである。

工場の熟練者グループは、スポークスマンとして、熟練した目撃者として奉仕するよう演出された。これらの人々は巨額の研究費を授与され、電磁波エネルギーの生体効果を扱う多くの委員会、評議会、国際政府委員の地位にるが、この科学分野ではいかなる研究資格ももたない人々であった。表面上彼らは、その作製した科学資料の数が最小限であることを発見されるまで、有名な研究者に思われた。これらの熟練者は送電線やマイクロウェイブ中継システムのような民間設備を扱い、法手続き上証言するために使われ今現在も使われている。

電磁波スペクトルのいかなる部分からも有害な効果の問題を公式に提出することに執着する科学者は評判を悪くし研究費を取り去られた。

そのような手段に訴えたにも拘わらず有害効果の疑問は去ることなく逆に激しさを増した。政府は立場を変えざるを得なくなった。政府による非熱効果の全面否定は、非熱効果が重要ではなく一時的なものと限定してであったが、その是認へと変化した。現在の政府の立場は、有害な非熱効果がいくつかあるかもしれないが、行動を起こす前にさらなる研究が必要であるというものである。この研究は継続されているが、全て国防省か関係する民間会社の下で行なわれているのである。

最近の状態

政策目的は達成された。そして電磁放射への民間人と軍職員の被爆は続いている。軍は現在の安全被爆基準を明らかにしてこなかった。しかし基本的に現在疑われている1平方センチあたり10ミリワットの基準に据えられたままであるか、ある重要な状態ではより高くさえあることを信ずるに十分な理由がある。

その理由は兵器システム開発における長い歴史にある。例えば、現在のマイクロウェイブ兵器システムのそれぞれが10ミリワット近辺の水準で設計されているのである。それより低いレベルでの電力供給では物理的に兵器の威力を落としてしまうのである。これが国家安全保障上の問題をきたすのである。たとえこれらのシステムが人々の健康と安全に潜在的インパクトを与えるものであると考えられても、強力で魅惑的な電磁波システムの展開は続くのである。

地上波緊急ネットワーク

上記のように兵器システムが多々ある一方、私は地上波緊急ネットワークシステムを特によい例と考える。地上波緊急ネットワークシステムは今日建設中の通信システムである。それは150〜175kHzの送信での超低周波の範囲を使用するものである。この超低周波はその信号を、周囲に放射するのではなく、地上波(地上に接近して進む電磁場)によって運ぶことができるために選ばれたものである。その信号は距離にともなって急激に小さくなるが、信号地上波エネルギーネットワーク中継基地は360度放射することができ、その範囲は250〜300マイル(400〜480キロメートル)に及ぶのである。このシステムは約300の中継基地からなり、塔の高さは300〜500フィート(91.44〜152.4メートル)である。中継基地は200〜250マイル(320〜400キロメートル)間隔に建てられ、それぞれの基地を経由して東海岸から西海岸にまで信号を送ることができるのである。1990年代初頭にこの建設が終わると、合衆国の全市民はこのシステムの送信に晒されることになるのである。

このネットワークの存在する理論的根拠は、核戦争は、この二重安全装置を施した通信システムが核攻撃の間あるいはその後に使用できれば勝つことができるという政府の見解に基づいている。このシステムは政府が核塔載潜水艦に敵国に発射させる命令を出すために使われることができる。核戦争の物理的性質はこのシステムが地上波電送であることを要求しているのである。

電磁波パルス

出版されていない核戦争のもう一つの側面に電磁パルス現象がある。電磁パルスは空中での核爆発によって生ずる電磁エネルギーの大変短い激しい爆発である。もしカンサスシティー上空100マイル(約160キロメートル)で核爆発が起こり、それにより電磁パルスが生じた場合、そのエネルギーは大変激しいもので、合衆国全域にわたり、全電力システムを止め、全てのコンピューター・磁気ディスク・テープレコーダーを破壊し、ミサイル誘導システム・軍使用のコンピューター・通信システム・商業用航空機を破壊し、全無線通信を止めてしまうのである。軍有機体は首を切られることになるのである。軍の筋書きにおいて、合衆国は降伏するか核破壊に直面することになるのである。

理論上地上波通信は可能である。しかし理論はつまらないものである。地上緊急ネットワークのハードウェアはトランジスターを基礎としたものである。たとえそれが堅固な秘密の場所に配備されたとしても電磁パルスにとっては攻撃し易いものなのである。加えて、電磁パルスは地上波緊急ネットワーク信号の道に大きな地上電流を発生させ、それは地上波緊急ネットワークの電送能力を減殺するものなのである。最後に、全地上波緊急ネットワークの基地はソビエトに知られており、よって攻撃され易いものなのである。
それにもかかわらず軍の心情は首を切る電磁パルス攻撃の後でも通信を維持するための地上波緊急ネットワークが使えると確信している。ここは核戦争の価値や選択に関する議論の場所ではない。しかし私見では地上波緊急ネットワークの存在理由はもっともらしいものである。核戦争は勝つことができないものなのである。

地上波緊急ネットワークの活用上、民間人に対する潜在的害は言及されてこなかった。私は第八章で要約した資料からだけでなく、本書全体で議論してきた、行動と認識の変換の潜在性に関わっているのである。地上波緊急ネットワークは、原子破壊共鳴と協力して、一般市民に行動の変化をもたらす卓越したシステムなのである。地球磁場の平均的強度は合衆国を横断して場所ごとに相違している。それゆえもしある特定の場所の生物に特別なイオン共鳴を望むならばその場所で特別な周波数を要求することになるのである。合衆国を横断して200マイルごとに設置された地上波緊急ネットワーク発信機の範囲は、それぞれの基地の範囲で、地球磁場の強度を特別仕立てするために特別な周波数を発することを許すものなのである。地上波緊急ネットワークの計画者がこの潜在的使用を行なうことには疑問をもつが、そのような行動が連邦政府の一部によって慎重に起こされることができ、地上波緊急ネットワークシステムの単なる存在が将来その要求を押さえられないことを証明するかもしれない。

新しい戦場:電磁兵器

軍は精力的に電磁場被爆による生体効果の存在を否定する一方、そのような生体効果が潜在的兵器として実際に探求されてきた。完全に音がなく知覚できないとてつもない利点をもつ兵器である。

電磁パルス概念は、核爆発の必要がなく電磁パルスを生じさせる装置の開発を通して拡大した。その装置は敵兵士に、コントロールセンターに、電子部品を故障させるため航空機に対する使用へと展開されることができるのである。この計画から派生して高出力パルス化マイクロウェーブがある。このシステムは激しい非常に短いマイクロウェーブパルスを生じることができるものである。100メガワットまでの電力で1,200MHz〜35GHzまでの周波数を使い、様々なタイプが試験されている。これらがまた人類に対する兵器として潜在的使用が考えられているのである。

ウォルター・リード陸軍研究機関のマイクロウェーブ研究部の実験計画からの最近の報告によると「1〜5GHzの範囲のマイクロウェーブエネルギーは軍にとって重要な範囲であり、人体の全内臓システムを貫通し、全内臓システムを危険に陥れる」。中枢神経システム上の影響が非常に重要と考えられている。1986年始まった実験計画は四部門に分けられている。(1)衰弱効果を促進する。(2)聴覚効果を通しての刺激を促進する。(3)妨害・停止効果を働くこと。(4)刺激でコントロールされた行動の効果。報告書は続けて述べる。「マイクロウェーブパルスは中枢神経システムと連結するようであり、熱と関係しない電気刺激に類似したものを生ずるようである。」デルガドの電気刺激と同様の行動変化が高出力パルス化マイクロウェーブによって可能であるように思われる。

高出力パルス化マイクロウェイブによる認識と行動の変化の発生は超低周波による微妙な変化と比べて大きな効果である。1982年の空軍の生体工学誌によると超低周波は多くの潜在的軍事利用が考えられる。例えばテロリストグループへの対処、群集コントロール、軍設備での安全違反のコントロール、戦略戦争での対人技術として。」同報告書はさらに「電磁波システムは、激しい生理的崩壊、知覚のゆがみ、分裂状況を緩和するために使われるであろう。それは無音であり、それに対する報復は開発することが不可能であろう。」電磁場を基礎に置く新兵器は、軍有機体の筋肉として付け加えられてきた。C3I教義は未だ成長し拡大している。軍は既に民間人の心を完全にコントロールすることができるまでになっているかもしれない。

私はここで軍の考えと人工電磁場の危険との関係のいかなる詳細も顧みることをしない。複雑で危険な状態はこの本の範囲を超えている。ここではそれに由来する政治政策がいかにその危険の公的認知を効果的に妨げてきたかの指摘のみ語ってきた。私見によると、軍指導者は未だ軍有機体の存在はアメリカ人民の多く生命と健康を犠牲にしてもまだ価値があると信じているのである。

第十一回電磁波悪用被害者の会資料 1999年3月28日