技術資料(海外)


神経科学の進展と人権への脅威


出典:Nature,391号,1998年1月22日発行,p316「News」
著者:デクラン・バトラー
翻訳:石橋輝勝


(パリ発)神経科学が人権への潜在的脅威となっていることが急速に認識され始めている。それは人間の遺伝子研究をする生物学が遺伝的決定に著しく集注し、遺伝的決定の化学を樹立しようとしていることからくる脅威と同様である。これは先週「科学と人種差別」というテーマを掲げパリで開かれたフランス国家生物倫理委員会の定例の公式会合で発表された結論の一つである。

同委員会の議長を務めパリにあるパストゥール協会の精神科学者Jean−Pierre Changeux 博士は「人間の脳の働きを理解することは将来の最も野心的で豊かな教養の一つになるようである」と委員会で語った。

しかし彼はさらに「神経科学は脳内の映像技術の進展によって計り知れないプライバシーの侵害を作る」とその潜在的危険を提起したのである。

その装置は今でこそ高度な技術を要するものであるけれども、それがやがて一般的になり、身近で使用されるようになることを予見したのである。それは個人の自由の侵害、行動のコントロール、洗脳という虐待に道を開くものである。

これらはもう決して空想科学ではなく、社会への深刻な危険を構成していると彼は主張したのである。 フランス原子力委員会の研究者 Denis LeBihan 博士は「映像技術の使用は人々の思考を読むことができるまでに至っている」とこの委員会で発言した。

フランス国家生物倫理委員会はこの危険を深刻に捉え、本問題を研究し可能な注意を喚起することを発表した。その研究はまた犯罪者が自ら犯した犯罪に責任があるかどうかという法的疑問として緊急に開始されるであろう。 Changeux博士はこれに対する反対議論として、ある種の行動への遺伝的傾向による無責任性を予想しているようである。

委員会の最後にClaude Allegre 国家教育・研究・技術大臣は技術を査定するための改造された議会が運営する事務所を設けることを提案し、人間諸科学においてこの国家生物倫理委員会の方法を他の科学分野でも採用することを論じて終わった。